iモード不通は普通である
諸野脇 正@ネット哲学者
http://www.irev.org
「iモードが不通? インターネットですから、不通は普通ですよ。」
■ iモード不通は大きな問題か
iモードの「事故」が多発していると言う。
テレビのニュースでも大きく取り上げられている。
〈11時から翌日未明まで繋がりにくかった。〉と言う。
しかし、これは大きな問題なのだろうか。大きな問題ではない。
インターネットでは、そのような時間帯に繋がりにくいのは当たり前である。私も苦労したことがある。何度繋ごうとしても、混雑して繋がらないのである。そのような苦労をしている人は、かなりの数にのぼっているであろう。
しかし、新聞やテレビに取り上げられ問題にされたことはほとんどない。
インターネットでは夜中に繋がりにくいのは常識になっているのである。多くの人が、なんとなく納得しているのである。特に、低価格の定額制のプロバイダーでは常識になっている。例えば、いくら使っても月額千円というプロバイダーがある。このようなプロバイダーでは、夜中にはほとんど繋がらないことが多い。
iモードはインターネットである。そう思えば繋がりにくくても不思議はない。しかし、それを電話のように思うから、大きな問題のように思えるのである。電話が不通になったら、大きな問題であろう。それは認める。しかし、インターネットでは多少の繋がりにくさは常識である。多くの人は我慢する。どうしても夜中に繋げる必要がある人は自分で手を打っている。例えば、二つのプロバイダーと契約しておく。従量制の比較的料金の高いプロバイダーを使う。
電話は必ず繋がることを意図してシステムが作られている。利用者間で一本の回線を確保する。それに対して、インターネットは必ず繋がることを意図してシステムが作られている訳ではない。多くの利用者で一本の回線を共有している。多くの利用者がいっぺんに情報を流そうとするとサーバーがダウンする。繋がらなくなる。
このような意味で、インターネットは、いい加減なのである。いい加減だから、安く作れる。必ず繋がるようにするためには、多くのコストがかかる。
■ 郵政省の介入は間違い
インターネットに慣れている人間にとって、このような原則はかなり理解しやすいであろう。しかし、このような原則を理解していない者がいる。郵政省である。
……郵政省は十九日、今週中にも東京都大田区にある同社のインターネット接続設備の立ち入り調査をすることを明らかにした。接続設備の運用状況や、故障時の連絡手順、管理体制などを点検し、事故の防止策を検討する。〔『朝日新聞』2000.4.20.〕
「調査」をするなら、まず激安プロバイダーを「調査」した方がよいのではないか。
この位の「事故」は、インターネットでは容認されている。
仮に、この位の「事故」が問題だとしよう。その場合も、郵政省が、「調査」することは間違いである。悪影響がある。ドコモが自分ですればよい。
郵政省は、「事故」がゼロになる状態を目指しているのであろう。もし、そのような状態を目指すとすれば、コストがかかる。そのコストは最終的には利用者が負担するのである。コストが高くなると利用者は少なくなる。つまり、郵政省の考えている方向は、利用者を減らす方向である。「事故」を起こすまいとすると、iモードを使える人が減るのである。「事故」の被害者を減らそうとすると、iモードを使えないという被害者が出るのである。隠れた被害者が出るのである。
もし、そのような判断をドコモが自分でするならば、それはそれでよい。インターネットの繋がりやすさをどの程度に設定するかは、経営上の判断である。安くて繋がりにくいプロバイダーが存在してもよい。逆に、高くて繋がりやすいプロバイダーが存在してもよい。
しかし、そのような経営上の判断を郵政省が強制するのは間違いである。郵政省は、インターネットについて、よくは知らないのである。実際に、事業を営んでいる会社より、はるかに知らないのである。知らないことを指導できると思うのは思い上がりである。
郵政省の行為は、経営判断を否定する行為である。
■ 事実による評価
郵政省が何もしなくても、ドコモは評価されている。次の二点が満たされれていればよいのである。
1 情報が公開されている。
2 競争がある。
情報が公開されていれば、消費者が自分で判断する。夜中に繋がりにくいことを知っていれば、夜中に使いたい人は買わない。それでもよい人だけが買う。
また、競争があれば、消費者は他社の携帯電話を買うことが出来る。iモードではなく、EZwebを買うことが出来る。
悪い評判が立てば、他社の商品を買われてしまう。また、消費者が容認できる状態ならば、iモードが売れる。ドコモは、事実によって評価される。
それで十分である。
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